日本語学校で働いていた頃は日本語ノンネイティヴの外国人留学生の他、日本にルーツを持つ留学生達を指導する機会に恵まれました。

本人は海外で生まれ育ち、海外の現地校教育を受けていてご両親のいずれかが日本人、という学生が日本語学習のために来日します。
そういったミックスルーツの学生達が抱える日本語学習の課題をご紹介します。
①バランスの取れた言葉の4技能の習得

ミックスルーツの学生は家庭で日本語を使っているので話す、聞くの2つの技能が非常に高い反面、読む、書くの2つの技能を伸ばす学習経験が少ないため、ことばの4技能に凹凸が見られます。
特に漢字学習などの表記は他の留学生と同様に一から積み上げ学習が必要になり地道な練習が必要です。言葉の技能の抜けや穴に気がつき自分の力で不足を補っていく学習努力が必要になります。
② フォーマルな日本語の習得

ミックスルーツの学生の発話の大きな課題はフォーマルな日本語表現です。日本語は家族間では敬語を使わない言語なのでいわゆる友達言葉では流暢に話すことができますが目上の人や社会的な距離感に配慮した丁寧な日本語での発話が学習課題となります。
とても残念なことに学校の外のアルバイト先などで、ある程度流暢に話せるがために“友達言葉で距離感のない失礼な人”、という誤解を受けることもよくあります。
です・ますで書かれたテキストに意識を向けてコミュニケーションの授業に重点を置くことが大切です。
③体系的な日本語の習得

ミックスルーツの学生には言葉の技能のバランスのほか、文法や語彙の能力にもまた大きな凹凸が見られます。ネイティヴの家族から学んだ豊かな語彙がある一方で初級レベルの語彙の中にも知らないものがあったり、上級レベルの文法を慣用的に使える一方で詳しい意味合いをよく理解していなかったりします。
日本語学校では学生のレベルに合わせたクラス授業が行われますが、ここでの地道な積み上げ学習を聞いたことがあるからわかっていると誤解してしまったり、自分には簡単なことだと捉えてしまい、億劫に感じたりしてしまうといつまでも抜けや穴が埋まらずにつまずいてしまうというケースも多く見てきました。
体系的な日本語の習得には基礎からの積み上げや穴埋めが非常に重要なポイントとなります。
まとめ

近年、日本語学校へ通う留学生は多様なバックボーンを持っています。家族に日本人がいることとミックスルーツの学生本人が日本語を十分に習得できているかは別問題と捉えられるのが現状です。
また、親が日本人だから大丈夫、日本へ行きさえすれば日本語を覚える、と言った環境設定を優先とした語学学習へのステレオタイプもまた学生達の学習負荷となっています。
わたし個人としてはミックスルーツの学生もやはり日本語を一つの言語と捉えて体系的に習得することが日本での生活の誤解やトラブルを防ぎ、最も本人への学習負荷やプレッシャーを軽減するのではないかと考えています。
言語能力とは環境から得られるものではなく時間をかけた地道な積み上げを経て少しずつ育まれていくものなのだと思います。